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ペルソナシリーズをはじめとするメガテン関連?

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エブリディ・ラブリーライフ

無料配布本からの再録です。
 
 
 
   
 
「また明日ね、リーダー!」
「明日は探索いこうね」

 手を振って教室から出て行く天城と里中を見送った俺は、カバンを肩に掛けて隣りの相棒を見た。
 律儀に教科書をカバンに詰める彼は、いつも学年一位の優等生だ。だからといっていつも勉強ばかりしているわけでもない。
 それどころか、探索に遊びに部活にバイトと、一体いつ勉強しているかと思うほど目まぐるしく日常を謳歌しているのに、学年一位の座は揺らぎはしない。
 出来のいい脳みそを少し分けて欲しい俺は下から数えた方が早い成績だ。

「今日はどっかよってく?」
「腹減ったな、陽介何食べたい?」
「お前の手料理」
「答えるの早いよ…」

 コンマ一秒かからずに俺が即答すると、カバンを持った相棒は苦笑を浮かべた。けれど曇り空色の目には少しの嬉しさが滲んでいる。
 表情が少なくて感情が読み取り辛い男だが、いつも傍にいて誰よりも彼を見ている俺にはそれがわかる。
 この男は俺に滅法甘いので、小さな俺の我侭くらい嫌な顔一つせず、それどころか嬉しそうに受け取る物好きなのだ。

「じゃあジュネスで買物して、今日はうちで一緒に夕飯食べよう」
「やりぃ! へへ、相棒大好き~!」

 俺が両手を挙げて大喜びすると、男の動きの悪い表情筋が少しだけ緩む。
 相棒の手料理は本当に美味い。たまに作ってきてくれる弁当もそれは絶品で、仲間達の間では壮絶な争奪戦が繰り広げられるほどだ。
 けれど嬉しいのはそれが食べられるからだけではない。相棒が俺のために料理を作ってくれる事が、俺はとても嬉しいのだ。
 ルンルン気分で教室を出て廊下を歩く俺に、相棒が小さな声でぼそりと呟く。

「そういう可愛い事言うと、今すぐここで押し倒すぞ」
「ブッ!! ななな何言ってんだバカ!」

 アイツのたった一言で俺の顔には一気に血液が上る。カァと体温が三度くらい上昇した気分になった。
 それを見て、悪戯めいた光を瞳に映して楽しそうに唇の端を持ち上げる。コイツはいい人そうに見えて結構人が悪い。
 けど、そんなところも好きだ。
 背中を預けられる大切な相棒でもあるのだけれど、俺たちはそれ以上の関係でもある。
 まさか自分が男と付き合って、あまつさえ女のように抱き締められる側になるとは夢にも思わなかった。本当にコイツじゃなかったら有り得ない。
 俺にとっては天変地異くらいの衝撃だった。でも、相棒の隣りを誰にも渡したくないんだから、仕方ない。
 高嶺の花も真っ青なこの男を手に入れるためならば、全て受け入れる事など安い代償なのだ。

「お前学校でそういうこと言うのよせっ!」
「誰にも聞こえてないよ、大丈夫」
「そういう問題じゃねーんだよ!」

 ぎゃあぎゃあ騒ぎながら廊下を移動していると、後ろから突然声が掛かった。
 聞き覚えのある声に振り向けば、そこには運動部のマネージャーである海老原あいが立っている。何故かいつも不機嫌そうな顔をした女だ。可愛いのにもったいない。

「もう帰んの?」
「海老原は?」
「アタシはマネで部活に出なきゃなんないの。なんでアンタはサボってんのにアタシは出なきゃならないのよ、腹立つわね」
「はは、ごめん、今日は用事があるからさ。頑張ってね」
「今度買物付き合いなさいよ、じゃあね」

 俺の存在を綺麗に無視して、海老原は言いたい事だけ言って去っていった。気の強いというか、鼻っ柱の高い女だ。けれどその中に隠してる脆さみたいな、虚勢を感じられてしまうのが彼女の可愛く見える所だろうか。
 キツイ物言いにもまったく動じない相棒は、彼女を軽く流してしまった。
 きっと一緒に部活に出たかったのだろう。用事というのはこれからジュネスで買物をして、俺のために夕飯を作る事なのだが、それは優先順位的にどうなのだろう。

「いいの?」
「何が?」
「部活」
「そんな毎回真面目に出てられないよ」
「そんなもんか」

 その割に相棒は部活を掛け持ちしている。多忙すぎてなかなか毎週2,3回活動のある部活の日全てに出ることは出来ないのだろうけれど、その忙しさの中で俺にかけてる時間はかなりのものだと思う。
 まあ恋人なのだから当たり前といえば当たり前なんだけど、引く手数多の所を目の前で見ると少し罪悪感。

「早く行こう、タイムセール始まるし」
「主婦かお前は」
「今日の特売は?」
「青果コーナーはトマトとキュウリが特売です、タイムセールは精肉コーナーで鶏肉が20%オフでございます、お客様」
「よし、今日は竜田揚げな」
「ひゃっほー、大好物ー!」

 付け合せにサラダと~などとつぶやく男子高校生は、どこかの国の王子と言われたら信じてしまいそうな
日本人離れしたルックスなのに、とても家庭的だ。
 居候している彼の叔父の家は母親が不在の父子家庭なので、その家事を切り盛りしているの彼なのだ。
 成長期の子供にインスタント食品など食べさせられん!とめきめき料理の腕を上げている。その恩恵に預かっている身としては有り難い。

 昇降口で上履きから靴へ履き替えていると、また後ろから声が掛かった。
 顔が広い相棒と歩いていると、こんなことは良くある事だ。

「おーっす! 帰るの早いね!」
「小沢はまだ帰らないのか?」
「あたしはこれから自主練」
「熱心だな」
「君にも少し分けてあげたいくらいね。明日は部活来る?」
「ん~、ごめん、明日は用事あるからまた来週」
「わかった、来週絶対だからね! 稽古の相手がいないと張り合いないんだから!」

 演劇部の小沢は元気一杯で声がでかい。さすが舞台女優を目指しているだけある。
 ハキハキと喋るところは好感が持てるが、結局コイツも俺を総スルーのまま去って行った。
 お前らどんだけ相棒の事しか見えてないんだと突っ込みたくなってくる。
 小沢も本当は自主練に付き合って欲しかったのだろう。去って行く時の目が若干名残惜しそうだった。
 海老原や小沢も、コイツに少しでも自分の方を向いて欲しくて仕方がないのだ。相棒だけを追いかける目線を見ていれば分かる。
 二人だけじゃない。仲間たちの天城や里中、りせちーだって皆コイツに夢中だ。
 面倒見が良くて優しい相棒は誰にでも手を差し伸べる。時折嫉妬でその背を蹴り飛ばしてやりたくなる事もある。
 お前は俺だけ見てればいいんだよ!
 そう叫べたらどんなに楽か。
 俺がそうしないのは嫉妬している自分が醜くて恥ずかしいのもあるが、それ以上に。
 比較なんかにならないほどに、相棒が俺を大切にしてくれているのが分かるからだ。
 だから俺は贅沢すぎる嫉妬心に蓋をして、相棒が好きだと言ってくれる笑顔を見せる。

「そういやお前が演劇してるとこ見たことねーな」
「見なくていいよ」
「なんでよ、バスケはたまに見に行ってんじゃん」
「恥ずかしいだろ」
「え、お前に羞恥心とか存在したの?!」
「羞恥心がなかったら今頃お前は俺に素っ裸に剥かれてるね」
「ふぎゃっ、墓穴!」

 俺は思わずがばっと己の身体を抱き締める。コイツならやりかねない。
 相棒はふふんと鼻で笑うとスタスタ校舎を出て行ってしまった。俺は慌ててその背を追いかける。
 背筋のいい背中に後ろから手を伸ばす。
 そのまま肩を組むようにがしっと腕を回すと、触れた場所から暖かな熱が伝わってきて、俺の心まで火照らせるようだ。

「性犯罪者にならないでね、あいぼー」
「この場合、捕まるのはマッパなお前だろ」
「なんで被害者の俺が捕まるんだよ!」
「だってお前、俺に剥かれても嫌がらないだろ」
「なっ、んなこと……!」

 ない、とは言えない。
 さすがにこんな往来で剥かれるのは御免こうむるが、部屋で二人の時ならば抵抗などするべくもない。
 連想的につい行為までも思い出してしまった俺の顔が勝手にまた赤くなる。
 本当に、いつもいつも翻弄されてばっかりだ。悔しいけれど、悔しくない。不思議な感覚が、嫌いじゃない。

「大丈夫だよ、こんなところで剥かないから」
「あ、当たり前だ!!」
「陽介の裸体を他の人間になんて見せられないからな」
「……それは、見苦しいからとかいう意味じゃないよな?」
「なんでだよ、お前ネガティブ過ぎるだろ」 

 独占欲的な意味で解釈してもおーけーなんですね?
 という俺の視線に、相棒は呆れたような目線を返す。
 俺の後ろ向きな考え方が自信家な相棒には理解出来ないのだろう。
 そんなこと言われても、性格なんだからしょうがない。直せるものなら俺だって直したい。
 正直、こんないい男に愛される資格のあるような立派な人間じゃないから、いつも俺は不安を抱えている。なんでお前は俺なんかが好きなのかわからない。
 けれど、シャドウが存在しない相棒は、真っ直ぐで偽りのない愛情をいつも注いでくれているのが分かるから、俺はお前の隣りで立っていられる。
 本当はもっと俺だってお前を支えたいのに、支えられてばかりで情けないとは思うのだが。

「少し分けてくれよ、その無駄な自信を」
「別に自信なんてないけど?」
「どこがだ! いっつも自信満々じゃねーか」
「自信…とは違うと思うけどな。俺は自分に正直なだけだから」
「まるで俺が嘘つきみたいじゃん」
「陽介はもう少し自分を信用してあげてもいいと思うよ」
「信用、ねぇ…」

 相棒の抽象的な物言いに俺は首を捻る。
 自分を信用していないのだろうか、俺は。そもそも自分を信用するってなんだろう。
 難しくて俺にはいまいちよく理解出来ない。
 眉を寄せて考える俺に、相棒は慰めるようにぽんぽんと俺の頭を叩いた。

「まあそんなに深く考え込むな」
「だって気になるんだもん」
「俺のことは信用してるだろ?」
「おう、当たり前だろ」
「うん。好きだよ、陽介」
「おう、……にゃっ?! にゃにいってんの!!」

 ここはまだ学校の校庭で、決して男同士が愛の告白をしていい場所ではないはずだ。
 俺は慌てて周りを見回してみたが、特に気にとめている人間はいなかった。ほっと胸を撫で下ろす。
 好きだよという甘い声が、耳の奥にこびりついている。ずっと離れないでいて欲しくて、俺は熱くなった耳を押さえた。

「俺の言葉なら、信用できるだろ?」
「う、うん……?」

 小さく頷いた俺に、ニッコリと滅多に見せない笑顔を相棒が浮かべる。
 花が一斉に開花したような華やかな笑みに、俺は一気に魂が持っていかれそうになった。この笑顔を見ながら死ぬなら悪くないかもと思わせる最高の笑みだ。
 心臓を鷲掴みにされたような感覚に胸を押さえて、乱れた呼吸を整える。正直、なんの話をしていたのかわからなくなった。というかどうでもいい。
 今の笑顔を心のカメラデータに記録して、永久保存で保護ロックを掛けた。
 ああ、でも現物も欲しい。

「なあ、ちょっと俺の携帯カメラに向ってもう一回笑ってみない?」
「イ・ヤ」
「やっぱダメか…ちぇっ」
「俺の寝顔で我慢しなさい」
「ゲッ、なんで寝顔撮ったの知ってんだよ!」
「クマに聞いた。お前の携帯の写真データに俺フォルダがあるって」
「クマの野郎!!」

 携帯を叩き壊される!と俺は慌てて愛用のオレンジ色の携帯を胸に抱き締める。
 絶対に怒られると思って内緒にしていたのに、居候のクマに勝手に携帯の中身を見られていたらしい。最近携帯を買い与えたせいで操作を覚えてしまったせいで、面白がって俺がいない間に中身を見たに違いない。
 帰ったら絞める。ボコる。
 俺はこわごわ相棒の顔色を見やる。
 けれど、意外にも相棒は苦笑を浮かべただけで手を出してこようとはしなかった。
 冷たい目で見られたり罵られたりされる覚悟をしたのに、肩透かしをくらってぽかんと俺は口を開けた。

「怒んないの?」
「怒って欲しいの?」
「や、んなことないんだけど」
「他の人に見せなきゃ別にいいよ」
「マジで! やった! じゃあ今度からおおっぴらに撮るわ!」
「今まで盗撮してたのかよ」
「寝顔は盗撮じゃん?」
「やっぱ携帯壊そうかな…」
「イヤッ、ダメ!! 死守する!!」

 じろっと不穏な目で見られて、俺は再びぎゅっと携帯を握り締めた。
 最もデータはパソコンにバックアップを取ってあるので、壊されてもデータが消えることはないので安心だが。
 相棒は呆れ顔で小さく笑うと、胸ポケットから自分の黒い携帯を取り出して開いた。待ち受けは川原の猫の写真だ。

「まあ俺もお前の写真持ってるしね」
「えっ! おおお俺の写真?! どんなの?!」

 まさか相棒が自分の写真を大事に携帯に保存してくれていたとは思わなかったので、ぎょっとして小さなディスプレイを覗き込む。
 確かに人の携帯に自分の写真データがあるというのは恥ずかしい。けれど好きな人が自分の写真を大事に持っていてくれるのは嬉しい。むずがゆい、そんな気分だ。
 相棒の指が携帯を捜査して、カメラのデータフォルダを開く。
 どんな写真だろう?
 俺みたく寝顔とか盗撮してたりするんだろうかと、少しのわくわくとときめきと恥ずかしさを覚えていた俺は、耳に飛び込んできた言葉に自分の携帯を取り落としそうになった。

「ハメ撮り、見る?」

「ブーーーーッ!!! おおおおおま、何、ちょ、はははハメぇ?!」
「落ち着け」
「落ち着いていられるか! なんでんなもん撮ってんだよ、つかいつ撮った!」
「いつって言われてもな、何度か撮ってるからいくつかあるけど。お前が飛んでる時にこっそりね。あ、動画もあるよ?」
「けけけけ消せ、今すぐ消せアホーーーー!!」
「断る。お前だって俺の写真持ってるんだからおあいこだろ」
「いやいやいや全然重みが違うよ!? ただの寝顔写真と、ハメ撮りとか、レベルが全然!!」
「俺はハメ撮りより寝顔のが恥ずかしいけど」
「お前の基準がおかしいだけだっつの!」

 取り上げようとする俺の手を叩いて、相棒は胸ポケットに携帯を仕舞ってしまった。
 さすがは相棒。俺の何手も上を行く。
 寝顔盗撮なんて甘かった。実は着替え中の盗撮写真もあるのだが、そんなもの足元にも及ばない。
 ハメ撮りはない。マジでない。
 
「ぶっぷくく……」
「は、何?」

 突然身体を折って笑い始めた相棒に、俺はきょとんと目をぱちくりさせる。
 こんな風に爆笑するのも珍しいのだ。レアすぎてそれこそ動画に取りたいが、そんな勇気はない。
 相棒は肩を震わせて笑いながら、途切れ途切れに言葉を告げる。

「くく、嘘、冗談…だよっ」
「え?! あ、……な、なんだよ…、信じたじゃねーか、バカ! はぁ~びっくりした…」

 ハメ撮り写真は嘘だったらしい。俺は安堵でがっくりと脱力する。からかわれたのだ。
 相棒はこういう人の悪い冗談を稀に脈楽なく爆弾のように落とすから怖い。
 自分のあられもない写真がなかったことに安心した俺は、相棒に笑顔を見せた。
 だが、それは次の瞬間凍りついた。 

「動画はさすがに無理だったよ、動きながらだとぶれるね。どっかに固定するとかしないと。……ねぇ、今夜あたりやってみようか?」

 待てお前。
 動画が、嘘なのか?
 じゃあ写真はあるってこと?

 顔を上げた相棒は、ニヤリと薄笑いを浮かべている。
 冗談なのか嘘なのか、ホントなのか本気なのか。
 一筋縄ではいかない男。

「動画は…止めてください、お願いします……」

 俺は敗北を噛み締めながら涙目で頭を下げた。
 何が敗北って、こんなことされたって。

 相棒が大好きなんです惚れた弱みって奴です。
 
  
END

作品名
エブリディ・ラブリーライフ
登録日時
2009/12/24(木) 22:50
分類
ペルソナ4::SS(千里)
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