じめじめとした梅雨空に久方ぶりに太陽が顔を出した、梅雨も中休みに入った七月の初め。
もうすぐ梅雨が明けて夏が来るのだが、夏休み前に待っているのは恐怖の期末テストである。おかげで、手放しに夏休みを喜べないのが現状ではある。
ついでにマヨナカテレビの方は相変わらず後手後手で、被害者の目星はついていたのに、目を離し隙に連れ去られた久慈川りせを何とか助け出し、今はその回復を待っている状況だ。
その為、待っている間はスクールライフを楽しめるということで、ここぞとばかりに多忙を極めていた真澄が更にスケジュールを詰め込んでいるようだった。
その日も真澄が所属するサッカー部が、暫く降り続いた雨の間は活動出来なかったようだが、今日は約一週間ぶりに活動するらしい。
ということで、真澄もサッカー部のメンバーに引っ張られて部活に行ってしまった。
イマイチ乾ききっていない地面で泥だらけになりながらボールを追いかけているサッカー部の連中は、さながら珍しいおもちゃを与えられた子供のようだ。
俺、花村陽介は家に帰っても良かったんだが、さし当たってやる事もなく、教室の窓際から見下ろせるグラウンドの様子を見る。
部員に拉致されていった真澄を待っているわけではない。が、今日はバイトもない為、放課後は暇なので、なんとはなしに見ていた。
元々、運動神経がいいのか、真澄のプレイには光るものがあって自然と目を惹きつけられる。部活動とは言っても、この学校に全国大会を目指すような本格的な練習をしているようなスポコン連中はいない。どちらかというと、放課後に有り余った体力を身体を動かすことで発散しているだけとも言える。
俺はバイトもあるから部活には何も所属していない。現状、わざわざ何かの部に所属する必要性を感じないくらい、別件で生命の危険とも隣り合わせな運動というか、バトルを毎日とは行かないが結構な割合でやっている為、そこまで体力が有り余っていると言う気はしない。真澄もそれは同じなはずなのに、サッカー部に入るなんて、正直、酔狂だと思う。ついでにアイツは吹奏楽部所属だったり、色んなアルバイトをやっていたりと、結構毎日を忙しく過ごしている。いやはや全く、その勤勉さには脱帽する。
グラウンドが見下ろせる窓辺のクラスメイトの机に座って手すりに頬杖をついて、思考を色んなことに飛ばしながら、真澄を目で追いかけていた。他に見知った友人が長瀬以外そこにいないからだ。決して意識的に真澄を追いかけていたわけではない。
クラスの連中はもうほとんどが部活へ行くか帰宅するかしていて、今現在この教室には俺しかいないような状態だった。
「うーす、花村」
後ろから名前を呼ばれて、振り返れば、立っていたのは帰り支度を済ませ、なぜかイチゴ牛乳を二つ持った一条康。隣のクラスのヤツだ。真澄のサッカー部つながりで同じ部員の長瀬の友達。ここ最近仲良くなった友人の一人だ。こいつは確かバスケ部のホープだったはず。真澄ほどのレベルまではいかないが優しげな甘いマスクをしているからそこそこ女子に人気はあるらしい。
「よぉ、一条」
「何? サッカー見てんの?」
「おー、なかなか面白いぜ」
一条は俺の立っている隣までやってきて何故か俺に一つイチゴ牛乳を渡してから、グラウンドを覗きこむ。
今まで降り続いた雨の為に、他の運動部が活動をしてないから、そこそこ探す必要もなくすぐに目に入ってくる為、そんなに間を置かないうちに真澄や長瀬を見つけたようだった。
「そういうお前は、部活は? バスケも今日だろ?」
「ああ、今日は人数集まらなかったから、軽く走って終了。あ、それ飲んでいいよ」
「そっか、お疲れさん」
一条から貰ったイチゴ牛乳にストローをさして口に含むと、甘いイチゴミルクの味が口の中にほんわりと広がった。
バスケ部の方はどうやら、部員達にヤル気がないらしく、そこが不満だと一条は肩を竦ませる。
一条も俺と同じようにイチゴ牛乳を飲んで、一瞬顔がほころんぶ。しかし、その後がっくりと頭を落とす。
「あー、真澄や長瀬がバスケやっててくれたらなぁ」
思うようにチームが集まらずに、部活が出来ないと言うのは、かなりのストレスになるのだろう。
確かに自分だけが練習してもチーム力を試されるバスケではあまり意味がないかもしれない。
「長瀬は…ともかく、何でそこで真澄の名前が出てくるわけ?」
「ああ、花村知らないの? 真澄、中学校時代はバスケやってたんだってよ。運動部入る時、サッカーにしようかバスケにしようか悩んだんだと」
「へぇ、真澄がバスケねぇ」
華麗なボール捌きで、敵チームのDFを颯爽とすり抜け豪快にゴールを決める真澄を見つつ、想像してみた。
今ほど身体が出来ていない中学時代にバスケのユニフォームを着て、ドリブルしたりする真澄を。
お、意外とイケるかも。
つか、何やらせてもソツなくこなせるヤツっているもんなんだな。頭もいいし、顔もいいし、性格までいいときた。天は二物も三物も真澄に与えちゃったわけだ。
確かサッカー部に入った理由が、里中の健脚に負けない足を作るんだとかそういう理由を言ってたような気がする。
でも何でバスケ部にしなかったんだろうな、ホント。経験あるほうがやりやすいだろうに。
ツラツラとそんなことを考えつつ、いちご牛乳を吸う。
「別に、俺は花村がバスケ部に入ってくれてもいいと思ってんだけど?」
イチゴ牛乳を更にズーッと音を立てて吸い込む。
視線を感じて、真澄を追いかけるのをやめて一条の方を見ると、俺のほうを見ていた。
「俺?」
「うん、合同授業の時のお前のバスケセンス、チェック済みだぜ。いい動きしてんじゃん」
「あー、いや俺ほら、バイトあるし」
「何言ってんだよ、お前細いけど、結構バイトで鍛えてんだろ?」
ひょいと一条に手を取られた。二の腕を揉まれてくすぐったくて腕を引く。
シャドウと対峙する時に苦無やレンチを握ってる所為で、結構マメが出来て硬くなった手。ついでにそこそこ運動しているおかげで筋肉もしっかりついてきている。尤も、大剣やゴルフクラブなんかを振り回している真澄や、八高の机をぶん回してる完二に比べれば体格的に全然劣るが。
しかし、流石に週に一回はテレビに潜って戦闘やって、身体鍛えてます……とは言えないというか説明できないから、バイトで筋肉もつくことにする。
「あーうん、バックヤード任されたら、十キロとか二十キロとか重い荷物平気で運ばされるからな。つか、俺別に体育会系じゃねーし」
「そか? お前、動き機敏だし、結構イイ線いってると思うんだけどな。まあいいや、とりあえず考えといてよ」
「おう、助っ人くらいなら出来るかもな」
にこりと邪気のない笑顔で言われると、断りづらい。
練習も何もしていない状態でチームプレイが必要なバスケに助っ人が可能かどうかなんて分からないが、人数合わせくらいにはなるだろうと思ったので、そう返した。これでも一応空気読むのには長けてるつもりだから。周りとあわせるくらいは出来るだろうと思ったのだ。
しかし正直、俺はこの学校での部に所属するつもりはなかった。何処へ行ってもついてくる親の肩書きの所為で何気に肩身が狭いからだ。今から部活に所属するとすれば多分大丈夫かもしれないが、確実に転校したての頃は、あまりいい思いは出来なかっただろう。学校にすらいい思い出がないのだから。
そういうことを流石に一条に言うわけにはいかないので、笑ってごまかす。
そん時はよろしく頼むぜ!と言われて、軽く頷いた。
ああ、イチゴ牛乳が甘くて美味い。
話はそれで終わりだと判断して、視線をまた真澄たちの居るグラウンドに戻す。
一条も同じように手すりにもたれてグラウンドを見遣った。
今にも雨を降らせるような分厚い雲はなくて、珍しく綺麗に晴れ渡っている。それでも徐々に太陽が傾いてきていて、もうすぐ部活動の時間も終わりに近づく頃だろう。
「そりゃそうと、花村さ、お前、真澄とはドコまで行ったの?」
突然の一条の問い掛けに意味をつかめず、俺は首を傾げる。
「へ……、ドコって? 休みの日でも沖奈くらいまでしか遠出しないぜ?」
「ああ、いや、そうじゃなくてさ」
「そうじゃなくて?」
「お前と真澄、付き合ってんだろ? セックスとかしたのかよ?」
「ブーーーーッ!」
思わず、イチゴ牛乳噴いたじゃねーか。窓開いてて良かった。下に誰も歩いてないといいけど……。
飛び出たイチゴ牛乳を拭いつつ、一条を見る。
「うわ、きったねーお前」
一条は若干引き気味だ。だが、俺だって引くわ。何、付き合うとか、せ、セックスとか。
「あの、一つお聞きしますが、その根拠はドコからで?」
「えー? お前ら見てるとすぐ分かるじゃん」
「いや、いやいやいや、待って! 見てると分かるって、俺らどんだけオープンなホモなんだよッ。あのな、誤解してるみたいだから、言っておくけど俺と真澄が付き合ったことなんて一度としてねーからなッ!」
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同人誌より冒頭抜粋。
こんな調子でずっと話が進みますww
- 作品名
- Side of you (同人サンプル)
- 登録日時
- 2009/07/15(水) 21:38
- 分類
- ペルソナ4::SS(煌椰)